健康寿命の延伸

フレイル・サルコペニア予防が高齢者の介護予防と健康寿命延伸に繋がる

しーたす
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こんにちは!理学療法士のしーたす(@generalist_pt)です。

フレイル・サルコペニアが医療業界では注目されてきています。

まだまだ耳なじみのない言葉かもしれませんが、今後世間一般的にも浸透していくことが予想されます。

高齢化社会を先進しどんどん平均寿命が延びてきている日本において知っておくべき知識になってきます。

今から知っておくことで予防・対策を講じることができるので、ぜひ知っておいてもらいたいです。

フレイル・サルコペニアとは何か?どうすれば予防できるのか?など現在分かっていることを簡単に整理していきたいと思います。

この記事にはこんなことが書かれています。

○フレイル・サルコペニアとは

○フレイル・サルコペニアの診断基準

○フレイル・サルコペニアのエビデンス

○フレイル・サルコペニアの予防と対策

この記事を読めばフレイル・サルコペニアについて基本的な知識や予防と対策について知ることができます。

フレイル・サルコペニアとは

まずはフレイル・サルコペニアの用語の意味と違いについて理解していきましょう。

そして我が国における現状も踏まえて述べていきます。

フレイルとは

海外の老年医学会で使用されている「frailty(虚弱、老衰)」に対する共通した日本語訳として日本老年医学会が「フレイル」2014年5月に提唱しました。

日本の介護保険制度は要支援1~2、要介護1~5に区分されていますが、いわゆる要介護状態がフレイルに当たります。

加齢による身体予備能低下にプラスして、脳卒中や骨折などのイベントによりガクンと機能低下を生じていくフレイルの概念図になります。
フレイル

フレイルの位置づけ

フレイルは文字通り虚弱な高齢者を意味すると思ってもらえればいいかと思いますが、似たものとしてサルコペニアやカヘキシアといわれるものがあります。

高齢者によって3つとも持ち合わせている人もいればどれかのみに当てはまる人もいるという概念図です。

何となくのイメージだけでこういう用語があるんだなという程度で大丈夫です。

フレイルの位置づけ

サルコペニアとは

サルコペニアとは、ギリシャ語の「筋肉」を意味する「sarx」と「喪失」を意味する「penia」を組み合わせた造語です。

加齢に伴う一次性のサルコペニアと、寝たきりや病気や栄養不足に伴う二次性のサルコペニアに大きく分けられます。

白い部分が脂肪でグレーの部分が筋肉になります。

筋肉内にも白い部分がところどころあり脂肪に置き換わっているのがわかるかと思います。

サルコペニア画像

我が国における現状

日本のフレイル有症率になります。

75歳以降で急激に増えているのがわかるかと思います。

黒が男性白が女性になりますが、特に男性の伸び率がすごいですね。

高齢になるほど罹患率は増えていきますし、今後高齢者がどんどん増えていく日本においては必然的に増加していくことになると思います。

日本のサルコペニア罹患率

フレイル・サルコペニアの診断

フレイル・サルコペニアはともに診断基準が示されています。

以下の基準に思い当たる人は要注意です。

フレイル判定基準

フレイルの判定基準は以下の5つの項目のうち3項目以上が該当すると当てはまります。

体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度低下、身体活動量低下にそれぞれ判定基準が設けられています。

フレイル判定基準

サルコペニア診断基準

サルコペニアは以下のようなアルゴリズムにそって診断されます。

握力と歩行速度のどちらかが低下している場合に筋力測定で一定の筋断面積以下の場合にサルコペニアと診断されます。

なぜこの2項目が加えられているかというと、全身の筋力をもっとも反映し相関しているといわれている指標だからです。

握力が弱い人や歩行速度が遅い人は総じて全身的な筋力低下を生じている可能性が高いというわけです。

ただ痛みやケガによって握力や歩行速度が低下している場合もありますので、最終的な診断は筋断面積の測定により判定されます。

サルコペニア判定基準

フレイル・サルコペニアのエビデンス

では、なぜフレイル・サルコペニアが注目されているかのエビデンスを紹介していきたいと思います。

平均寿命と健康寿命

医学の進歩により平均寿命はどんどん伸びてきています。

あくまでも平均なのでわずかながらでも子供や若くして亡くなった人も含まれての結果なので、実際の体感としてはもっと長生きするイメージになるかと思います。

現在生まれてくる子供の2人に1人は100歳まで生きるとの推測もされているぐらいです。

平均寿命が長くなることは単純に喜んでいいものでしょうか?

ここで注意しなければいけないのは、平均寿命は寝たきりの期間も含まれるということです。

病院のお世話になることなく健康に生きられる寿命を健康寿命といわれます。

つまり、この図でいえば男性は8年以上、女性は12年以上不健康な状態で生きるという期間があるといえます。

これって医療費の負担や介護の負担から考えるとすごく大変なことですよね。

この平均寿命と健康寿命の差をどれだけ少なくするかが喫緊の課題となって政府も対策を急いでいる状況です。

これを改善する一つの対策として、いかにフレイル・サルコペニア予防が大事かということになってきます。

平均寿命と健康寿命の差

速く歩ける人ほど長生き

歩行速度と平均余命がきれいに相関しているのがわかりますね。

この図は割と便利で、今自分の歩行速度がどのぐらいで年齢がいくつかによって後何年生きることができるかというのがわかるという凄いグラフです。

例えば横軸の70歳で上から三つ目の歩行速度が1.4m/秒のところをみてみてください。

そのまま縦軸が大体20年を指し示しているのが分かるかと思います。

つまり、70歳で歩行速度が1.4m/秒の人は平均してあと20年は余命があるということになります。

歩行速度と平均余命の関係

日本人のBMIと生命予後

これはBMIと死亡リスクの関係を示した図になります。

BMIの20を総死亡リスク1とした場合のBMIごとのリスクになります。

これをみると、BMIが20未満のいわゆる痩せが進むにつれて死亡リスクがあがっているのが分かるかと思います。

逆に肥満の方が死亡リスクが低くなっているという意外な結果になっています。

女性のBMI30以上の極度の肥満は例外的に死亡リスクが少し高くなっていますが、男性ではBMIでいわれる肥満に該当するものは死亡リスクが低くなっています。

これが、高齢者は適度な肥満の方が健康といわゆる根拠のひとつです。

日本人のBMIと生命予後

フレイル・サルコペニアの予防と対策

加齢に伴って少しずつ機能低下を生じた結果としてフレイル・サルコペニアといわれる状態になってしまいます。

その過程で脳卒中・骨折・肺炎などのイベントが生じて寝たきり期間が生じると加速度的に進んだり、不可逆的な変化(後戻りできない変化)を起こしたりしてしまいます。

前述したように75歳以降で一気にフレイル・サルコペニアといわれる状態の方が増えます。

早い人では50代ぐらいから衰えが始まってしまっている人もいます。

50代~75歳までの対策が大切になってくるのではないかと思います。

フレイル・サルコペニアの予防と対策は、食事と運動しかありません。

食事(栄養)

人間の体を構成しているものはたんぱく質です。

筋肉の材料となるのもたんぱく質ですが、日本人は不足しやすい傾向にあります。

朝はおにぎりだけ、昼はうどん定食(うどんとご飯)、夜はお好み焼き

こういう食事だと炭水化物まみれで圧倒的にたんぱく質が足りていません。

たんぱく質摂取量が多い群から少ない群に群分けした際の除脂肪体重の変化を示したグラフになります。

当たり前ですが摂取タンパク質量が少ない群ほど除脂肪体重も少なくなっていますね。

除脂肪体重というのは脂肪を除いた体重ということなので筋肉量を反映します。

摂取たんぱく質量と除脂肪体重の変化

次に、高齢者をノンフレイル、プレフレイル、フレイルに群分けしてそれぞれ朝食・昼食・夕食でのたんぱく質摂取量を示したグラフになります。

フレイルの高齢者は朝食でのたんぱく質摂取量が少ない傾向にありました。

夕食は肉や魚を食べたとしても朝食でなかなか摂取できていないようです。

たんぱく質は食いだめしておくことはできないので、毎回の食事で均等にたんぱく質を摂取することが理想になります。

そうすることで、常に血中のアミノ酸濃度を満たしておくことができ筋肉の合成が促進されます。

朝食は食べないとか軽く済ますとかになってしまう人も多いかもしれません。

卵を1つ追加するとか鮭の塩焼きを食べるとか工夫してみましょう。

あとなかなかたんぱく質が摂取できない人はプロテインの摂取をオススメします。

毎回の食事でのたんぱく質摂取が大事

運動

フレイルの重症度別に運動の効果をみた研究になります。

介入7ヶ月後より、中等度フレイルでは運動の効果が示されましたが、重度フレイルでは運動による効果はあまりみられませんでした。

フレイルが重症化する前の早期対策が重要になるといえます。

フレイル別運動による効果

フレイル高齢者に対する介入をいくつかまとめたものになりますが、概ねどの研究においても歩行速度の改善はみられました。

前述のように歩行速度は平均余命と相関するという研究結果もあることから運動介入により平均余命の向上にも寄与するといえます。

フレイル高齢者の介入による歩行速度変化

これは、歩数計を配布し、毎月10%歩数を増やすようにアドバイスし毎日日記をつけてもらった6か月の介入研究ですが、歩行能力・下肢筋量の改善が認められました。

歩数の向上でフレイル高齢者の機能改善

厚労省の推進している活動量になります。

18~64歳は1日8000歩、60分の運動を目安に

65歳以上は最低4500歩程度、40分の運動を目安に

青のピースは少し活動量の高い運動として示されています。

アクティブガイド 歩数

また、今より10分多く体を動かす+10を推奨しています。

歩行や普段の日常生活の活動などほんの少しからでもいいので運動習慣をつけていきましょう!

アクティブガイド 分

まとめ

日本において少子高齢化社会はどんどん進んでいきます。

働き手・社会を支える若い世代が少なくなっていく一方、介護が必要となりうる高齢者は増えていきます。

日本の将来は不安材料が大きい状況ですが、そのカギとなるのは健康寿命の延伸だと思います。

少しでも長く高齢者が健康に働けるような未来を作っていかなければ先はないでしょう。

そのためには、健康寿命を短くする一つの要因となりうるフレイル・サルコペニアを予防しなくてはなりません。

今から対策していければ予防できます。

些細なことかもしれませんが、食事や運動は積み重ねです。

自分や家族を含めて将来を健康に過ごせるように一緒に勉強していきましょう。

それでは、また!

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