・仕事の関係で就寝や起床時刻がバラバラになりやすい
・眠気で集中力が低下したりパフォーマンスの低下を感じる
このような悩みを解決する記事になっています。
そもそも人はどのように眠気が生じ睡眠に至るのでしょうか?
睡眠のメカニズムは研究により解明されてきており、睡眠圧と体内時計が鍵となることが分かってきています。
この記事で紹介する「睡眠圧」と「体内時計のメカニズム」について知ることで、現在もっとも支持されている睡眠のメカニズムについて理解することができます。
理学療法士として学んできた医学知識も踏まえて、「睡眠圧」、「体内時計のメカニズム」についてお伝えします。
この記事の信頼性の担保としては、厚労省の発表している情報も参考にしています。
・睡眠のメカニズムを知りたい人
・勤務交代制で体内時計が狂いやすい人
・眠気が原因でパフォーマンスが低下している人
睡眠を支配するのは「睡眠圧」と「体内時計」
人が眠るのには「眠気」が必要
眠くないときにいくら頑張って眠ろうとしても眠れませんよね。
人が眠りにつくためには、「眠気」が必要です。
では「眠気」とは何でしょうか?どのようにして発生するのでしょうか?
近年の研究により、そのメカニズムが解明されつつあります。
「睡眠」のメカニズムは「睡眠圧」と「体内時計」が鍵
睡眠のメカニズムは「ツー・プロセス・モデル」と呼ばれる仮説で説明されています。
二つの過程によって、睡眠と覚醒のサイクルが進むという仮説です。
①睡眠の欲求の強さである「睡眠圧」
②約25時間周期の「体内時計」
睡眠圧とは【時間が経つほど眠くなる?】
【睡眠圧とは】覚醒時間が経過するほど睡眠の欲求はたまる
この睡眠圧は、覚醒している間にどんどんたまっていきます。
睡眠圧が十分蓄積されると眠気が出現し睡眠が始まります。
そして眠ることにより、睡眠圧は解消されます。
睡眠圧の蓄積と解消は、十分に水がたまると傾いて水を吐き出す「ししおどし」によく例えられます。
【オレキシンの作用とは】睡眠圧に対抗する機能
睡眠圧が高まれば高まるほど眠気がくるか、というと実際はそうではありません。
睡眠圧に耐えられずに、急な眠気に襲われてしまっては、日常生活に支障を生じてしますよね。
睡眠圧に対抗する機能として、脳内物質である覚醒作用のある「オレキシン」があります。
オレキシンがあることで睡眠圧に対抗して覚醒し続けることができるといわれています。
オレキシンについては詳しくは後述します。
体内時計とは【人の体内にある覚醒と睡眠を司る】
体内時計は地球の自転周期より長い約25時間
地球の自転は24時間周期ですが、人の体内時計は約25時間周期であることが研究により証明されています。
光の存在しない洞窟においても、覚醒と睡眠の周期はこの25時間を示したとのことで、体内に備わった機能であるといわれています。
つまり、普通に生活していては1時間ずつずれこんでいきます。
※24時間15分程度という見解もある
これが人が夜更かしになりやすい原因のひとつといわれています。
体内時計は睡眠圧と独立している
体内時計は、睡眠圧の蓄積とは独立して、覚醒シグナルの波をつくっています。
この覚醒シグナルは午後9時頃にピークを迎え、その後に弱まっていきます。
眠気の「ししおどし」が傾くことで睡眠が始まり、睡眠圧が十分に解消されるまで睡眠が続きます。
体内時計のリセットは太陽の光によって行われる
体内時計は25時間で普通に生活していれば、毎日1時間ずつ夜更かしになっていくはずです。
しかし社会生活を営んでいくうえでは、毎日同じ生活リズムで生活していかなければなりません。
そうなると、毎日1時間ずれていっては困るわけです。
人の体内にはこの体内時計をリセットする仕組みが存在しています。
それは太陽の光です。
朝目が覚めて太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされます。
そうすることで、体内時計がずれこんでいくことを防ぎます。
体内時計は、覚醒・睡眠のリズム以外にも影響を与えます。
体温などの「自律神経系」「内分泌ホルモン系」「免疫・代謝系」なども体内時計により調節されています。
このような約1日の周期をもつリズムのことを概日リズム(サーカディアンリズム)と呼んでいます。
オレキシンとは?【覚醒し続けるために必須】
覚醒物質であるオレキシンが人を起こし続ける
睡眠と覚醒を切りかえるメカニズムについて、1998年~1999年に大きな発見がありました。
それが脳内物質である「オレキシン」の発見です。
生まれつきオレキシンを作れないマウスが、突然眠りにおちてしまうことが判明しました。
この症状こそ、日中に異常な眠気に襲われて突然眠ってしまう深刻な睡眠障害である「ナルコレプシー」でした。
こうしてオレキシンは、人が安定して覚醒し続けるために必要な脳内物質であることがわかったのです。
オレキシンがなければ、睡眠圧に負けてしまい15時間以上の長い時間覚醒し続けることはできないといえます。
オレキシンの解明がきっかけで新しい睡眠薬が生まれた
脳の視床下部には、覚醒状態を維持するための部位があり、「覚醒中枢」といわれています。
覚醒中枢にある神経細胞の表面には、オレキシンの受容体があります。
ここにオレキシンが結合すると、覚醒シグナルが生まれ、覚醒状態が維持されます。
このメカニズムに注目したのが、世界の製薬会社です。
受容体へのオレキシンの結合をブロックすれば、新しい睡眠薬を開発できるためです。
その結果、オレキシンの結合をブロックするタイプの新しい睡眠薬である「スボレキサント(商品名;ベルソムラ)が誕生しました。
2014年に日本でも認可され、従来の睡眠薬より副作用が比較的少なく、依存性も弱いとされ、不眠症の治療薬として普及が進んでいます。
眠気が強くなる時間帯とは【アフタヌーンディップ】
前述の睡眠圧に従えば、覚醒から時間が経過するほど眠くなるはずです。
しかし、一日で最も眠気が襲ってくる時間帯は、昼食後の午後2時頃といわれています。
まだ就寝時間まで時間があるのに、なぜ眠くなるのでしょうか?
その理由として、人は太古の昔よりその時間帯に昼寝をしていたからだ、という仮説が考えられています。
実際にサルなどを観察すると、その時間帯に昼寝していることが多いといわれます。
人間は社会生活を営むうえで、その時間帯は起きていることが通常となっています。
本来の体の中に刻まれたリズムを考えれば、その時間帯に昼寝をするのが自然なのかもしれませんね。
眠気が弱くなる時間帯とは【フォビドンゾーン(睡眠禁止ゾーン)】
次の日が仕事で早いときに、普段寝ている時間より早く寝ようとすることありますよね。
そういうとき、あまり寝つけないことってありませんか?
実は、眠気が一番遠のく時間帯が、いつもの就寝時間の2時間前なんです。
毎日午後10時に寝る習慣がある人でいえば、午後8時~10時がもっとも眠りにくい時間になります。
前述の睡眠圧で考えれば、覚醒時間が長くなり夕方~夜にかけて時間が経過するほど、眠気がくるはずです。
では、なぜこの時間帯に眠気が一番少なくなるのでしょうか?
入眠の直前に脳が眠りを拒否するという意味で「フォビドンゾーン(進入禁止域)」といわれており、睡眠禁止ゾーンともいわれます。
これはイスラエルの睡眠研究家ラビー氏が1986年に提唱した理論ですが、いまもってなおなぜそうなるのか、解明されてはいません。
まとめ【睡眠のメカニズムを知ることが快眠への第一歩】
現代社会において、色んなストレスや不規則な生活を強いられ、睡眠の悩みを抱えている人は増えています。
うまく睡眠をとることができないと、集中力の低下やパフォーマンスの低下につながり、精神の不安定さにもつながってしまいます。
なぜ眠気がくるのか?
睡眠のメカニズムが解明されつつあります。
睡眠のメカニズムを知ることで、うまく利用し快適な睡眠をとる方法へのヒントとなります。
ぜひ、今回の記事を内容を理解し、睡眠のメカニズムに対する理解をえて、睡眠とうまく付き合っていく一助となれば幸いです。
それでは、また!