・冷え性なので靴下をはいて寝たり、電気毛布を使ってしまっている
・夜に暑くて寝汗をかいて寝苦しくて起きてしまう
このような悩みを解決する記事になっています。
睡眠は体温と深く関係しています。
体温調節がうまくいっていないことで、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めたりする原因となります。
体温の調節機能には個人差があり、冷え性の人は眠りにくいといえます。
なぜ冷え性の人は眠りにくいのか?
なぜ眠たくなると手足が温かくなるのか?
睡眠のカギを握るのは「深部体温」です。
深部体温が低下することで人は眠ることができます。
体温調節をうまく行うことが良い睡眠に繋がります。
この記事で紹介する「睡眠と体温の関係性」を知り、「睡眠に良い体温調節方法」を知ることで、質の良い睡眠をえることができるようになります。
理学療法士として学んできた医学知識も踏まえてお伝えします。
この記事の信頼性の担保としては、以下の文献を参考にしています。
・内山真:『睡眠のはなし快眠のためのヒント』.中公新書,2014
・内山真:ヒトの体温調節と睡眠.日温気物医誌,2014
・古賀良彦:『睡眠と脳の科学』.祥伝社,2014
・マシュー・ウォーカー:『睡眠こそ最強の解決策である』.SB Creative,2018
・永松俊哉:低強度・短時間のストレッチ運動が深部体温,ストレス反応,および気分に及ぼす影響.体力研究,2012
・冷え性で手足の末梢が冷たくなりやすい人
・睡眠中の体温調節がうまくできていない人
・寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めやすい人
睡眠と体温の関係性
体温には皮膚体温と深部体温の二種類がある
体温には体の表面の温度である「皮膚体温」と、脳や内臓などの「深部体温」の二種類があります。
手足を触ったときに温かいとか冷たいとかいうのは、「皮膚体温」にあたります。
体温計で熱を測るときは、脇の下・口腔内・直腸などで測ります。
これがいわゆる「深部体温」を測っていることになります。
※実際に脳や内臓の温度を測るわけにはいかないため、便宜上、脇の下・口腔内・直腸で測ったものを使用しているわけです。
深部体温が下がることで眠たくなる
深部体温は覚醒時には皮膚温度より2℃ほど高くなっています。
睡眠時になると0.3℃ほど下がって皮膚温度との差が縮まります。
睡眠に必要なのは、「皮膚体温」と「深部体温」の差が縮まることです。
つまり、ヒトの体は「深部体温」が下がることで眠れるようにできています。
「深部体温が下がること」で眠気を感じるのです。
子供や赤ちゃんで手足が温かくなると眠たいといったりしますよね。
皮膚から熱を放散することで、深部体温を下げて体が眠る準備をしているんですね。
冷え性の人は眠りにくい
冷え性の人は末梢の手足の温度が下がりやすく、皮膚からの熱の放散ができないといえます。
冷え性の人は、深部体温をうまく下げることができないため、眠りにくいといえるわけです。
研究でも、冷え性で手が冷たくなりやすい人は、熱を逃がすのが寝つきに時間がかかることが報告されています。
また、手の末梢皮膚温の低い人ほど入眠困難が強いことも報告されています。
【冷え性の人の特徴】
表面体温が低い ⇒ 深部体温が下がりにくい ⇒ なかなか眠れない
体温を調節する2つの仕組み
体内時計
ヒトには体内時計が備わっており、体温だけでなく、さまざまな生体リズムを作り出しています。
通常、「深部体温」は、夜から明け方にかけて下がり、午前 4 時~6 時頃を底にして上がり始め、夕方 4 時~6 時頃に体温上昇のピークが来ます。
一般的に「深部体温」は、1 日の中で1~1.5℃程度の差があります。
手足の表面温度は通常33.5℃前後ですが,入眠期において副交感神経活動が優位になると,手足の温度は約1.5℃上昇します。
手足が暖かくなると,表面血管が拡張して血流が増加し,手足からの熱放散が起こります。
深部体温は,約0.4℃下がると深いノンレム睡眠に入っていくことが生理実験で確かめられています。
私たちの体には、「深部体温」が低くなると眠くなり、昼夜の差が大きいほど眠りやすくなる、という仕組みが備わっています。
体内時計がきちんと働いていると、1日の体温の変化も適切に行われ、睡眠に有利に働くようにできているといえます。
体内時計が整っている状態だと、「日中の覚醒時に体温を上げて、夜間の睡眠時に深部体温を下げる」ことができる。
熱産生と熱放散
夏もあれば冬もあり環境によって気温は異なります。
しかし、それに左右されずに体温を一定に保てるような機能が備わっています。
恒常性(ホメオスタシス)とかいわれる機能です。
夏であれば、深部体温が上がりすぎないように、汗をかいて熱を放散します。
冬であれば、深部体温が下がりすぎないように、震えたりして熱を産生しようとします。
熱産生と熱放散する例をいくつか挙げてみます。
【熱産生】震える、体を動かす、食事をする
【熱放散】汗をかく、皮膚表面の温度を上げる
体温調節の不具合で眠れていない人によくあるパターン
体内時計のリズムが崩れている
質のよい睡眠がとれない人は、深部体温のリズムが乱れた状態である人が多く存在します。
通常、体温がピークになるはずの夕方になっても体温が上がらず、夜布団に入る時間になっても体温が下がらない。
深部体温のリズムには「メラトニン」というホルモンが影響します。
メラトニンは睡眠時に多く分泌され、朝目覚めて太陽の光を浴びると、脳からの指令で分泌が止まります。
現代人は、寝る直前までスマホやPCを眺めて人工的な光(ブルーライト)を浴びています。
それにより、体内時計のリズムが崩れている場合が多いのです。
慢性的な運動不足
筋肉はもっとも熱産生が得意な組織です。
マッチョやスポーツマンは汗っかきなイメージありますよね。
筋肉量が多いと基礎代謝が上がりやすく、熱も産生されやすいため体温が上がりやすいといえます。
そのため体温を下げようとして汗をかくわけです。
その逆に慢性的な運動不足になると、筋肉量も少なくなり基礎代謝も低くなってしまいます。
本来、深部体温が高くなるはずの日中や夕方でも高くならない。
そのため、昼夜の深部体温の差が少なくなり眠りにくくなります。
寝具や寝間着の環境が悪い
人は眠るときに深部体温を下げるために、皮膚から熱を逃がそうとします。
その反応のひとつに寝汗をかくということがあります。
でも吸水性や通気性の悪い寝具だと熱がこもってしまい、熱をうまく逃がすことができません。
そうなると、深部体温が下がらず眠りにくくなっていまします。
また寝汗でびしょびしょになることで寝苦しくなってしまいます。
その点、パジャマは通気性や吸水性に優れており眠るためには最適な服装です。
Tシャツに短パン、上下ジャージ、パンツ一丁など様々な恰好で寝ている人がいると思います。
でも、できればパジャマを着るのをオススメします。
質の良い睡眠においては案外重要だったりします。
冷え性で電気毛布や靴下を履いて保温してしまっている
手足が冷えやすくて眠りにくいという人も多いと思います。
案外、やっている人も多くて間違っていることがあります。
それは、靴下で保温しようとしたり、電気毛布や湯たんぽで温めながら寝ていることです。
手足がポカポカして気持ちいいかもしれません。
しかし、深部体温を下げることができず、かえって眠りにくくなってしまうので要注意です。
質の良い睡眠をとるための体温調節の方法
①朝太陽の光を浴びて体内時計をリセットする
体内時計のリズムを整えることが、1日の深部体温のリズムを整えることにつながります。
体内時計を整えるには、毎日ずれないようにリセットすることが大切です。
体内時計のリセットに一番効果的といわれているのは、朝太陽の光を浴びることです。
②夕方に軽い運動を行う
日中と夜間時の体温差が大きいほど良い睡眠につながります。
普段運動不足な方で日中の体温が低い人は、夕方頃に軽めの運動をして、体温を上げておくことをオススメします。
①激しめの運動ではなく軽い有酸素運動を行うこと
②寝る3時間前ぐらいまでにしておくこと
あまり激しめだと交感神経が高ぶってしまいます。
遅めの時間帯だと同様に交感神経が優位な状態のまま夜を迎えてしまいます。
夕方頃に、ウォーキングや軽い有酸素運動で十分です。
③ぬるめのお風呂にゆっくりつかる
寝る2時間前にぬるめのお風呂にゆっくりつかるのもオススメです。
リラックス効果もあり副交感神経に移行するのにもいいです。
深部体温を上昇させることで、その後の睡眠時の深部体温の低下を促すことができます。
上がった体温を下げるまでには、90分程度かかるといわれているため、そのあたりを目安にするといいでしょう。
スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の実験データによると、40℃のお風呂に15分入った後で深部体温を測定すると、およそ0.5℃上昇がみられました。
42℃などの高温だと交感神経の緊張を高めてしまいます。
38~40℃の少しぬるめのお湯に就寝の2時間前につかるようにしましょう。
④足湯に使って足元を温める
夜遅い場合などで、寝る直前に入浴すると、深部体温が下がりきらず眠りにくいこともあります。
そういう場合には、足湯で足元を温めるだけでも効果的です。
足湯で温めることで、入浴と同様に熱の放散を促すことができます。
⑤朝までエアコンをつけっぱなしにする
室内の気温も体温調節に大きく影響を与えます。
特に夏の猛暑日などは、質の良い睡眠を得るためにはエアコンの使用は必須です。
最初の3時間だけタイマーにするという人も多いと思います。
しかしエアコンはつけっぱなしで一定の室温を保つことをオススメします。
睡眠後は深部体温が下がっていきますが、朝の目覚めに向けて再び深部体温は上昇していきます。
このときにエアコンが切れて室温が高くなっていると、夜中に熱くなって寝汗びっしょりで悪い目覚めをしてしまいます。
夜はエアコンを27℃前後に設定してつけっぱなしにしておきましょう。
⑥寝具を通気性のよいものに変え、パジャマを着るようにする
寝具が通気性の悪いものを使っていると、中で熱がこもってしまい適切に深部体温を下げることができません。
寝汗をびっしょりかいてしまうことにもなり、寝苦しくなってしまいます。
寝具を通気性のよいものに変えることで、熱の放散を促して深部体温を下げることができます。
また、パジャマは保温・吸水性・通気性などの機能を兼ね備えています。
寝具を通気性のよいものに変え、パジャマを着てみましょう。
⑦エアコンや扇風機の風が直接当たらないようにする
睡眠中に風が直接体に当たることで、睡眠の質が低下するという研究※もあります。
※Morito, N. et al. : Effects of two kinds of air conditioner airflow on human sleep and thermoregulation. Energy and Buildings.2017;138:490-498.
部屋の空気を循環させる目的で使用するのはいいですが、直接体に風が当たらないように工夫して使用しましょう。
⑧体を温める食事で体温を上げよう
食事誘導性代謝熱といって、食事をとることで体内では熱が産生されます。
夕食で体を温める食事を摂ることで、深部体温の上昇を図ることができます。
ショウガなどは体温をあげる食材として有名ですよね。
夕食で深部体温を上昇させることで、夜眠りやすくなります。
逆に夜に体を冷やすようなアイスなどを食べたり、スイカなどを食べると眠りにくくなります。
⑨ストレッチをして身体を温めよう
夜就寝の1~2時間前にストレッチをするのも効果的です。
リラックス効果もあるので副交感神経が高まり、睡眠の準備が整いやすいといえます。
またストレッチが深部体温を上昇させるという研究もあります。
寝る前にストレッチをする習慣をつけてみてはいかがでしょうか。
①朝太陽の光を浴びて体内時計をリセットする
②夕方に軽い運動を行う
③ぬるめのお風呂にゆっくりつかる
④足湯に使って足元を温める
⑤朝までエアコンをつけっぱなしにする
⑥寝具を通気性のよいものに変え、パジャマを着るようにする
⑦エアコンや扇風機の風が直接当たらないようにする
⑧体を温める食事で体温を上げよう
⑨ストレッチをして身体を温めよう
まとめ【体温調節することで質の良い睡眠をとろう】
深部体温の低下が、睡眠に必要なことが研究で明らかになっています。
体内リズムで1日の中でも深部体温は変化しています。
うまく体内リズムを整え、夜の睡眠時に深部体温を下げることが、質の良い睡眠の必須条件です。
今回の記事では、体温調節のコツもいくつかご紹介しました。
自分に合った方法を試してみて、体温調節をしてみてください。
自分で体温調節ができるようになった頃には、より良い睡眠を獲得できていることでしょう。
それでは、また!