・眠らなくても大丈夫なんじゃないの?
・人は眠らなかったらどんな影響があるの?
このような悩みを解決する記事になっています。
試験勉強で時間がないときなど、眠ってる時間がもったいないと思ったことありませんか?
では実際人は眠らないとどうなるのでしょうか?
【本記事の内容】
●睡眠不足が与える影響について
●人はどのぐらい起きていられるのか?断眠実験からの教訓とは
理学療法士として学んできた医学知識も踏まえてお伝えします。
この記事の信頼性の担保としては、厚労省の発表している情報、睡眠に関する本や文献を参考にしています。
・内山真:『睡眠のはなし快眠のためのヒント』.中公新書,2014
・古賀良彦:『睡眠と脳の科学』.祥伝社,2014
・櫻井武:『睡眠の科学』.講談社,2017
・マシュー・ウォーカー:『睡眠こそ最強の解決策である』.SB Creative,2018
・ショートスリーパーに憧れている人
・睡眠時間がもったいないと思っている人
・睡眠不足気味の人
寝ている時間がもったいない?無駄?
寝る間を惜しんで頑張る日本人
眠っている時間がもったいないと思ったことはありませんか?
1日24時間というのはみんな一緒。
その中で差をつけるためには、眠らずに頑張るしかない。
「寝る間を惜しんで頑張る」って言葉もあるぐらいですが、果たして本当に賢明なのでしょうか?
日本人は睡眠時間を削って働きすぎている?
テスト前に徹夜をする学生たち
明日はテストだけど全然勉強していない・・・。
最後の悪あがきとばかりに朝まで徹夜して勉強しよう!と頑張る。
徹夜をしてテストに臨んだことがある人も多いんじゃないでしょうか?
差し迫ったことがあるときに、もっとも削りやすいのが睡眠時間。
普段から勉強すればこんなことしなくてもいいんですけどね・・・。
ショートスリーパーに憧れる人たち
睡眠時間を減らしたいと思ったことある人はいませんか?
睡眠時間が短くても質の良い睡眠なら大丈夫。
ってそんな認識の人は要注意!
睡眠科学では、平均睡眠時間が6時間未満の人を「ショートスリーパー」といい、人口の5%存在します。
9時間以上を「ロングスリーパー」といい、人口の10%存在します。
はっきり解明はされていませんが、遺伝子の変異が関与しているという風に考えられています。
自分に合った睡眠時間を知りましょう
— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) November 24, 2019
先天的なショートスリーパーでない人が、短時間睡眠を長期に渡って続けるとどうなるのでしょうか?
ホルモンの分泌が抑制され、炎症を抑えるサイトカインやリンパ球などの免疫系が弱くなり、死亡率が高くなることが分かっています。
ショートスリーパーでない人が、短時間睡眠するのはオススメしない
— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) November 24, 2019
睡眠不足による悪影響
睡眠を削っていいんでしょうか?
睡眠不足が重大な交通事故や仕事でのミスにつながるかもしれませんよ!
では、睡眠が足りないとどのようなことが起こるのでしょうか?
注意力が低下する
1日徹夜すると、かなり酒によったときと同等の注意力低下を生じます。
認知・精神運動作業能力は、1日の徹夜(24時間覚醒)で血中アルコール濃度0.1%(およそビール大瓶1本飲用に相当)の時と同程度に低下します。
徹夜して運転しても飲酒運転のように罰せられることはありません。
でもそれと同程度に危険といえます。
1986年のスペースシャトル・チャレンジャー号の事故、1989年のアラスカ沖タンカー事故は睡眠不足が原因といわれています。
判断力が低下する
睡眠不足は冷静な判断力を鈍らせます。
ときに警察官の過酷な取り調べが冤罪を生むのも、容疑者の睡眠不足が関わっているはずです。
本当はやっていなくても、自白した方が楽になれると誤った判断を下し、一生を台無しにしてしまった人もいます。
ある種の宗教的儀式では、睡眠を奪うことで判断力を鈍らせ、コントロール下におくこともあります。
日中の眠気で居眠り
居眠り運転が一生を台無しにしてしまうかもしれません。
睡眠時間が6時間未満の者では、7時間の者と比べて居眠り運転の頻度が高かったことが示されています。
睡眠不足でウトウトと居眠りをして、交通事故を起こす間一髪だったという経験をしたことはありませんか?
居眠りにお悩みの方は、下記記事も参考にどうぞ!
睡眠不足と病気の関係【過去の研究から】
睡眠不足がアルツハイマー病の要因?
睡眠不足が原因でアルツハイマー病になるかもしれませんよ!
マウスを使った研究ですが、眠りを断つことでアルツハイマー病の原因といわれるアミロイドβというたんぱく質が、記憶を司る海馬に蓄積することが報告されています。
アミロイドβたんぱく質は、覚醒時に蓄積されていき、睡眠によって洗い流されて少なくなるというわけです。
睡眠不足がメタボリックシンドロームや肥満の原因
起きている時間が長いからその分カロリー消費すると思ったら大間違い!
あなたの肥満は睡眠不足が原因かもしれませんよ!
コロンビア大学チームの2004年の発表で、32歳〜59歳までの1万8000人の調査です。
平均睡眠時間が7時間の人と比べて、
☑️6時間の人は23%
☑️5時間の人は50%
☑️4時間以下の人は73%
肥満になる確率が高くなると報告されています。— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 12, 2019
深夜に眠れない時に無性に何か食べたくなるのには理由があります。
睡眠時間が足りないと、食欲を抑制するホルモンが抑えられ、食欲促進するホルモンが分泌されます。
眠気による見せかけの空腹には要注意!
寝不足が肥満の指標であるBMIの関連性が報告されています。
寝不足が肥満を助長しちゃう。 pic.twitter.com/iCCazS0Ftb— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) November 25, 2019
睡眠不足は肥満を招く⁉︎
睡眠不足になると食欲を増進させるグレリンというホルモンの分泌が増え、逆に食欲を抑制するレプチンというホルモンが減少します。
深夜にスナック菓子を食べたくなったり、徹夜明けにラーメンを食べたくなったりしませんか?
睡眠不足によるホルモンバランスが原因かも!— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 2, 2019
心血管疾患や代謝異常のリスク増加に関連
睡眠不足が原因で重大な病気を発症するかもしれません。
睡眠不足が寿命にも影響するといわれる所以ですね。
睡眠障害は高血圧の発症リスクとなります。
入眠障害群4794名、睡眠維持障害群4443名の4年間追跡調査した研究があります。
睡眠障害のない人に比べて、高血圧発症率は、
☑️入眠障害群では1.96倍
☑️睡眠維持障害群では1.88倍不眠が交感神経優位を招くためと考えられています。
— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 2, 2019
睡眠と糖尿病の関係を調べた研究
2649名を8年間追跡調査
睡眠障害のない人に比べて、糖尿病の発症率は、
☑️入眠障害群では2.98倍
☑️睡眠維持障害群では2.23倍2型糖尿病患者4870名の睡眠時間とHbA1Cを調べた研究
☑️HbA1C値が最も低いのは6.5〜7.4時間眠っている被験者群— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 2, 2019
睡眠不足は乳癌の発症リスクを高める?
女性の方は乳癌検診を受けたことある方も多いのではないでしょうか?
小林麻耶さんが若くして乳癌で亡くなられましたね。
もしかしたら、睡眠不足が乳癌の発症リスクを高めてしまうのではないかという研究も報告されています。
睡眠時間は乳癌の発症リスクとなる!?
2万3995人の女性を8年間追跡した前向きコホート研究
☑️平均7時間睡眠をとる人乳癌発症率を1とする
☑️6時間以下の人は1.62倍
☑️8時間は1.14倍
☑️9時間以上は0.72倍睡眠不足による免疫の低下から、癌の発症リスクを高めるのかもしれませんね。
— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 2, 2019
週3回夜勤をするアメリカの看護師の乳癌発症リスクは、日勤の看護師に比べ1.8倍、夜勤専門の看護師は2.9倍に達すると報告。
睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が影響します。
メラトニンは朝太陽の光を浴びて、14〜16時間後に血中濃度が高まります。夜間に働く人は1/5の分泌量にとどまります。— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 2, 2019
人は何日起き続けることができる?【断眠実験】
マウスの断眠実験では
眠りの機能を調べるために、古くから動物の睡眠を取り去る「断眠実験」が行われてきました。
結論から述べると、完全に睡眠をとらない状態が続くと最終的には、動物は疲労状態からくる感染症やそれにともなう多臓器不全で死亡します。
マウスの断眠実験が1980年代にシカゴ大学のレヒトシャッテンのグループにて行われました。
断眠が2週間に及ぶと皮膚から毛は抜け、潰瘍が形成され運動性が低下した。
体温や体重の恒常性や調節機構に異常がみられ、断眠後3〜4週で感染症で死んでいった。
断眠が免疫機能にも重篤な影響を与えた。— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) December 12, 2019
つまり断眠は、脳の視床下部の恒常性維持機構に悪影響を与えると考えられています。
こんなことを聞くと、仕事や受験勉強で忙しく、睡眠不足を実感している方は不安になるかもしれません。
このようなことはラットを1週間無理やり断眠させることでみられるものです。
われわれは通常、断眠しようと思っても必ず眠ってしまうので、睡眠不足で死ぬことはありません。
またこのようにひどい断眠をしたラットも死に至る前に睡眠をとらせれば、やがて回復することも分かっています。
脳や身体はある程度、睡眠欠乏に耐える許容度や柔軟性を持っているといえますね。
多少ならば、「無理がきく」ということですね。
もっとも長く眠らなかった人は?【人の断眠実験】
1964年にランディー・ガードナーは、カフェインなどの興奮剤を一切使用せずに11日間連続で覚醒し続けた。
この試みを価値あるものにしたのは、スタンフォード大学の著明な睡眠研究者であるウィリアム・デメント博士の詳細な観察のもと行われたことです。
【断眠後2日目】
⇒怒りっぽくなり、体調不良を訴え、記憶障害がみられ、集中力がなくなりテレビをみることも困難になった。
【断眠4日目】
⇒妄想をきたすようになり、ひどい疲労感を訴えた。
【断眠7日目】
⇒震えを呈し、言語障害が認められた。
11日間の断眠後は、連続して15時間眠った。
その後、23時間覚醒し、10時間半眠った。
1週間後には完全に元の生活リズムを取り戻した。
後遺症を残すことはなかった。
その後、2007年にイギリス人の男性が266時間の記録を残し、ギネス記録となっています。
人間は何時間起きていられるか?
有名なギネスチャレンジです266時間が世界記録です。
このチャレンジで分かったことは、一時的な脳機能は低下するが、ただちに精神障害は引き起こさない、体内時計はすぐ戻るということのようです。
最高何時間起きたことありますか?
ちなみに僕は41時間です!— しーたす@健康寿命延伸ブログ (@generalist_pt) November 30, 2019
マイクロスリープが脳の障害や後遺症を防いだ?
11日間の断眠においても脳に障害を残さなかったのは、マイクロスリープがかろうじて脳の機能を維持したと考えられています。
当初、睡眠学者の多くは、断眠により人は重篤な症状をきたすと考えたようです。
しかし、そうはならなかった。
極度の睡眠不足に陥った人には、非常に短い睡眠といわれるマイクロスリープが現れます。
仕事や試験勉強で徹夜をした翌日など、一瞬眠ってしまったという経験があるのではないでしょうか?
マイクロスリープとは、ほんの数秒間、あるいはもっと短い一瞬の間だけ眠りに陥る現象をいいます。
眠りは絶対に必要なものではありますが、ある程度融通がきく柔軟なものであり、無理がきくのも事実です。
だからこそ無理しがちなんですよね。
睡眠不足が与える健康への悪影響は計り知れないものがあります。
くれぐれも、このようなバカげた挑戦者とならないようにしましょう(笑)
まとめ【睡眠不足が病気の原因のひとつとなりうる】
人生の1/3の時間が睡眠と聞いて、時間がもったいないと思うかもしれない。
でも、人間にとって脳や身体を回復させる睡眠は必要不可欠なものです。
断眠実験のような一時の睡眠不足では後遺症や精神障害を引き起こさない。
でも、慢性的な睡眠不足が心血管障害・代謝障害・肥満・癌などのリスク要因となることも明らかにされつつあります。
健康のためには睡眠は大切な要素となります。
睡眠不足と侮ることなく、しっかり睡眠をとるようにしましょう。
それでは、また!