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運動神経が良い悪いとは?スポーツの上達には運動学習が必要

運動神経が良い悪いとは?スポーツの上達には運動学習が必要
しーたす
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こんにちは!理学療法士のしーたす(@generalist_pt)です。

運動神経悪い芸人が某テレビ番組で放送されていたけど、あれ面白いですよね。

運動神経が良いとか悪いとかって一般的にもよく使われますが、俗にいう運動神経というのはどういうことなのでしょうか?

同じように運動しても運動神経の良い悪いって、実際人によって大きく差がありますよね。

スポーツもただがむしゃらに練習するだけではなかなか上手くなりません。

スポーツの上達には筋力や柔軟性だけではなく、スポーツに合わせた体の使い方が上手くなるということが大切になります。

そのためには運動学習理論について知ることがヒントになります。

理学療法士は運動学習の専門家

運動学習

なぜ、理学療法士が運動やスポーツの上達について語るのか?

理学療法士は骨折や靭帯損傷や脊髄損傷や脳卒中などにより、今まで使っていた身体の使い方では歩いたり日常生活を行えなくなった人に対してリハビリテーションを行います。

ただ筋力トレーニングやストレッチを指導するだけではありません。

動作を分析して体の使い方について指導する専門家です。

この部分に関しては、トレーナーよりコーチに近いスキルになると思います。

コーチはスポーツのスキルの視点から行うことがほとんどだと思いますが、理学療法士はもっと基本的な身体の使い方を指導する専門家といえます。

身体の機能改善やメンテナンスだけでなく、運動学習という教師の役割も持っています。

そのため、理学療法士は運動学習理論についての考え方を持っています。

下記は理学療法士が身体に対して介入する役割のイメージです。

セラピストは治療家と教師

運動学習とはどういうことでしょうか?

図をもとに考えてみましょう。

まず、『車の運転』(大人になってから新たに獲得した運動スキル)について考えると分かりやすいかと思います。

交通事故の原因は大きく分けると、車自体の故障(ブレーキやタイヤの問題など)と運転者のスキルの問題に分けられます。

これに対して、整備士は車の故障を修理し、教習所の教員は運転スキルを教えるわけです。

次にケガや病気をして、上手く身体を扱えなくなり動作ができなくなった人について考えてみましょう。

理学療法士は、ケガや病気で今までと異なった身体を持つ患者に対して、治療を施す治療家という側面と、身体の使い方を教える教師の側面を持っています。

理学療法士は運動学習の専門家といえます。

こういった新たな運動スキルを獲得することを運動学習といいます。

運動学習について車の運転から考える

車運転

車の運転免許をとったときのことを思い出してみましょう。

始めは上手くできなかったけど繰り返すうちにいつの間にかできるようになっていたと思います。

車の運転だけで考えても以下のような例が挙げられます。

・ブレーキとアクセルがどの程度の位置にあるか

・ハンドルをどの程度切ったらどう曲がるのか

・ブレーキをどの程度の強さで踏んだらどのように止まるのか

・車両の幅はどのぐらいなのか

・標識を瞬時に見つけて意味を読み取る

・距離感やスピードの感覚

例を挙げればキリがないですが、車の運転一つをとっても色んな運動学習や認知が必要となってくるわけです。

脳からの指令と運動を一致させて外的環境にマッチングさせるということが必要になります。

高齢者の車の事故が増えていることが話題になっていますが、加齢とともにこういう能力が落ちてくることが要因となります。

こういった車の運転のようなことがスポーツにも当てはまります。

いわゆる運動神経が良いとか悪いとかというのは感覚や運動のマッチングが上手なことといえるかと思います。

・バスケのシュートの距離感やタッチ

・ボールをつくハンドリングの感覚

・ステップの刻み方

・ディフェンスとの距離感

どれもストレッチや筋力トレーニングで改善できる問題ではなく、運動学習の問題であるといえます。

運動学習する上での量の問題

積み重ね

運動学習については、Schmidtが『熟練パフォーマンスの能力に比較的永続的変化を導く練習や経験に関連した一連のプロセス』と定義しています。

では運動学習をすすめる上で、どういう要因があるのでしょうか?

まずは、量についての問題です。

10000時間の法則が有名です。

Malcolm Gladwellは『何かの分野で天才と呼ばれるようになる人達に共通しているのは、10000時間の練習量』といっています。

リハビリの世界でいえば、歩行練習をしていないのに歩行がうまくなることはないということです。

スポーツでいえば、シュート練習をしていないのにシュートがうまくなることはないと言い換えることができるでしょう。

この10000時間という法則に明確なエビデンスはありませんが、運動スキルを習得するのに練習量が必要というのもひとつの真実といえます。

スポーツや職人などスキルを獲得するためには、どの領域においてもある程度の練習量が必要です。

ただここには注意が必要です。

闇雲に練習量をこなせば上達するかというと、そういうわけではありません。

間違った学習をしてしまったり、非効率な学習となってしまうためです。

そのために、スポーツの世界ではコーチが必要であり、職人の世界では師匠の存在が必要であり、障害を負った人の動作獲得に理学療法士が必要となるわけです。

運動学習する上での質の問題

quality

運動学習を促進するうえで、最低限量をこなす必要があるということは前述のとおりです。

ただ同じ量をこなしていても学習が早く進む場合と遅い場合があるのはなぜでしょうか?

ここに運動学習の質の問題があります。

運動学習には色んな方法や考え方があります。

スポーツの世界でも指導者の指導によって大きく上達することもあります。

逆に本人にとって合わない指導を受けたことで感覚がおかしくなって下手くそになることもあります。

そのためには、その動作や運動を行ううえで必要となる感覚を身に着ける必要があります。

脳や身体がみんな違うように指導方法もマッチするかしないかがあります。

優秀な指導者は様々な指導方法の引き出しを持っており、それを選手ごとに合った方法を選択することができるわけです。

運動神経が良い人はボディイメージが正確

脳イメージ

運動神経が良いといわれる人はどういう人をイメージしますか?

例えば、初めて経験する運動で手本をみただけなのに、上手く行える人などは運動神経が良いといえるでしょう。

こういう人たちは何が優れているといえるのでしょうか?

観た運動を脳の中の運動イメージで再現することが正確に行えているといえます。

そして、この動作をするときには、肩の角度がこのぐらいで肘がこのぐらい曲がってて、手がこのあたりにあるみたいな感覚が優れていることが一ついえます。

これはボディイメージとか身体図式とかいったりします。

脳の中にある自分の身体の感覚と言い換えることができるかと思います。

子供の頃から現在までの経験の中でこういう身体の感覚の正確性が人によって異なります。

遺伝や子供の頃の運動経験など様々な要因により作られます。

子供の頃に色んな遊びをして身体を使うことがこういったボディイメージや身体感覚のトレーニングになるといわれています。

ボディイメージや身体図式が正確に作られている人は基盤ができているため、新しい運動スキルを獲得するにあたって有利になるといえます。

運動を行うプログラムが存在する

脳プログラム

もう一つ運動神経の良さを規定する考え方として知っておくべきものがあります。

一般化された運動プログラム(Generalized motor program : GMP)というものです。

人間の体には数多くの筋肉が存在し関節も多数存在します。

そしてそれぞれの運動のタイミングや方向なども含めれば運動方法は無限に存在するわけです。

ボールを投げるという動作をするにあたって、上腕二頭筋をこのぐらいの力をいれて、肘をこのぐらい曲げてとか、一つ一つ脳から命令を送っていては複雑すぎてコントロールできないはずという考えです。

そこで、ボールを投げるためには、ボールを投げるという運動プログラムが存在するという考え方です。

運動神経が良いといわれる人は、このGMPという運動プログラムの精度が良いということがいえます。

ドッジボールを投げるのが上手い子供が初めて野球のボールを投げても上手く投げられたり飲み込みがよかったりします。

こういう子供は投げるという行為を小さい頃に繰り返すことで、投げるという運動プログラムの質が良くなっているといえます。

野球選手がゴルフが上手というのもバッティングの洗練されたGMPがゴルフスイングにも活きるからといえるかもしれません。

逆に構築されたGMPが新たな運動スキルの獲得の邪魔をするケースもあるといえます。

僕の体験談になります。

中学生の頃に卓球をやっていたんですが、社会人になった際にテニススクールに通い始めました。

運動のプログラム的に卓球の振りとテニスの振りが似ているためか、卓球の時の癖が抜けずにテニスで手首を使いすぎる打ち方になってしまって、テニスがなかなか上手にならないということがありました。

GMPというのは運動学習を考えるうえで大切な考え方になるかと思います。

GMP学習とパラメータ学習

learning

運動学習を行っていくうえで、何を学習するかという観点において大きく2つの学習に分けることができます。

それがGMP学習とパラメータ学習です。

GMPは前述のように運動を行ううえでの基盤となるプログラムのことであり、GMP学習はこの運動プログラムの精度をあげることをいいます。

そしてもう一つがパラメータ学習ですが、簡単にいうとその運動を行うにあたっての強弱のようなものを学習することをいいます。

例えば、バスケのシュート練習において、シュートフォームを練習することはGMP学習にあたり、3ポイントシュートのリングにいれるための強度を学習することをパラメータ学習というわけです。

スポーツにおいて基本やフォームが大事といって素振りなどを練習するのはGMP学習にあたります。

この基盤となるGMPの精度が低いとパラメータ学習をしてもバラツキがなかなか改善されないわけです。

つまり、運動学習においてはGMPの精度をあげるGMP学習が基本であり、その基本の上にパラメータ学習で強度のコントロールをしていくことが必要となるといえます。

まとめ

skill up

運動神経の良し悪しをわけるものとしては2つあるといえます。

①ボディイメージ・運動イメージの正確さ

②GMPの正確さ

この2つの精度が高い人は運動神経が良いといえるのではないかと思います。

つまり、初めて行う運動スキルにおいても、自分のボディイメージや運動イメージが正確であり、自分の体を思い通りに扱うことができるわけです。

そして、GMPが正確だとその運動を行うにあたって必要となる身体の動きが適切に引き出されるといえます。

運動神経の良し悪しというのは遺伝によるところもありますが、ボディイメージやGMPはいかに子供の頃に身体を使った色んな遊びを経験してきたか、によるところも大きいといわれます。

言語の学習に効果的な年代があるといわれているのと同じように、運動の学習に効果的な年代もあります。

運動神経の良い子供にしようと思えば、小さい頃のその時期を逃さないように色んな運動体験をさせてあげることが重要ではないかといえます。

また、運動学習理論については掘り下げて別記事でも触れていく予定です。

それでは、また!

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