リハビリ

運動学習って何?スポーツが上手くなるためには知らないとヤバい!

なぜあいつはあんなに運動神経がいいのかな?

僕もスポーツが上手くなりたいけど、運動神経が悪いからどうしようもないのかな。

このような悩みを解決する記事となっています。

 

しーたす
しーたす
こんにちは!理学療法士のしーたす(@generalist_pt)です。

理論を知って練習すれば、スポーツの上達スピードは上がります。

逆にいえば、闇雲に練習しても上達はしません。

そのカギとなるのが『運動学習理論』といわれるものです。

スポーツを上達させるカギとなる『運動学習理論』について解説します。

 

本記事の内容

・運動神経の良し悪しについて

・スポーツ上達のための運動学習の知識

 

運動神経の良し悪しとは何か

運動神経の良し悪し

運動神経悪い芸人から考える

アメトークで「運動神経悪い芸人」って特集があったのを知っていますか?

運動神経が悪い人が、スポーツをするとどんな動きになるのかっていう趣旨で、とにかく動きが面白くて笑えるんですよね。

 

運動神経が良いとか悪いとかって、一般的にもよく使われています。

では、俗にいう運動神経というのはどういうことなのでしょうか?

運動神経の良し悪しとは、脳でイメージしたり、目で見たことをどれだけ狂いなく再現できるかとういことです。

 

同じように運動しても運動神経の良い悪いって、実際人によって大きく差がありますよね。

運動神経の良し悪しを左右する要因としては、以下の2つが大きい。

・子供の頃にどれだけ体を動かす遊びをしたか

・遺伝的な要素

 

つまり、生まれながらに遺伝的な運動神経の良し悪しはあるけど、子供の頃の経験値による影響も大きいってことですね。

運動神経が良くなる(運動のセンスみたいなもの)というのは、大人になってからでは難しいといえます。

 

運動神経が悪くてもスポーツの上達は可能

運動神経の良し悪しは、遺伝や子供の頃の要因が大きい。

だからといって、スポーツや運動の上達は不可能かと言えば、そうではありません。

スピードの差はあれど、練習をすれば上達は可能です。

 

ただ、ただがむしゃらに練習するだけではなかなか上手くなりません。

スポーツの上達には筋力や柔軟性だけではなく、スポーツに合わせた体の使い方が上手くなるということが大切になります。

そのためには運動学習理論について知ることがヒントになります。

 

運動が上手くなるコツ【運動学習とは】

理学療法士は運動学習の専門家

理学療法士は運動指導の専門家である

しーたす
しーたす
なぜ、理学療法士が運動やスポーツの上達について語るのか?

理学療法士は、骨折や靭帯損傷や脊髄損傷や脳卒中などにより、今まで使っていた身体の使い方では歩いたり日常生活を行えなくなった人に対してリハビリテーションを行います。

ただ筋力トレーニングやストレッチを指導するだけではありません。

理学療法士は、動作を分析して体の使い方について指導する専門家です。

身体の機能改善やメンテナンスだけでなく、運動を指導する教師の役割も持っています。

 

運動学習について車の運転を例に考える

運動学習とはどういうことでしょうか?

図をもとに考えてみましょう。

セラピストは治療家と教師

まず、『車の運転』(大人になってから新たに獲得した運動スキル)について考えると分かりやすいかと思います。

交通事故の原因は大きく分けると、

・車自体の故障(ブレーキやタイヤの問題など)

・運転者のスキルの問題

これに対して、整備士は車の故障を修理し、教習所の教員は運転スキルを教えるわけです。

 

理学療法士は運動学習の専門家

次にケガや病気をして、上手く身体を扱えなくなり動作ができなくなった人について考えてみます。

理学療法士は、患者が新たな運動スキルを獲得できるように、運動指導を行います。

治療を施す治療家という側面と、身体の使い方を教える教師の側面を持っています。

新たな運動スキルを獲得することを運動学習といい、理学療法士は運動学習の専門家といえます。

 

運動学習の一例【運転やスポーツスキル】

車の運転も運動学習のスキルの一例

車を運転するスキルも運動学習の一つ

車の運転免許をとったときのことを思い出してみましょう。

始めは上手くできなかったけど、繰り返すうちにいつの間にかできるようになっていたはずです。

車の運転だけで考えても、以下のような例が挙げられます。

・ブレーキとアクセルがどの程度の位置にあるか

・ハンドルをどの程度切ったらどう曲がるのか

・ブレーキをどの程度の強さで踏んだらどのように止まるのか

・車両の幅はどのぐらいなのか

・標識を瞬時に見つけて意味を読み取る

・距離感やスピードの感覚

車の運転一つをとっても色んな運動学習や認知が必要となってきます。

 

脳からの指令と運動を一致させて、外的環境にマッチングさせる必要があります。

高齢者の車の事故が増えていることが話題になっています。

加齢とともにこういう能力が落ちてくることが要因となります。

 

スポーツのスキルを習熟させることも運動学習の一つ

スポーツのスキルというのは、感覚や運動のマッチングが上手になることです。

・バスケのシュートの距離感やタッチ

・ボールをつくハンドリングの感覚

・ステップの刻み方

・ディフェンスとの距離感

どれもストレッチや筋力トレーニングで改善できる問題ではありません。

運動学習の問題であるといえます。

 

運動学習する上での量の問題

運動学習には量の積み重ねが必要

運動学習については、Schmidtが『熟練パフォーマンスの能力に比較的永続的変化を導く練習や経験に関連した一連のプロセス』と定義しています。

では運動学習をすすめる上で、どういう要因があるのでしょうか?

 

まずは、量についての問題です。

10000時間の法則が有名です。

Malcolm Gladwellは『何かの分野で天才と呼ばれるようになる人達に共通しているのは、10000時間の練習量』といっています。

 

スポーツでいえば、シュート練習をしていないのにシュートがうまくなることはありえません。

この10000時間という法則に明確なエビデンスはありませんが、運動スキルを習得するのに練習量が必要というのもひとつの真実です。

スポーツや職人などスキルを獲得するためには、どの領域においてもある程度の練習量が必要です。

 

ただここには注意が必要です。

闇雲に練習量をこなせば上達するかというと、そういうわけではありません。

間違った学習をしてしまったり、非効率な学習となってしまうためです。

・スポーツの世界ではコーチが必要

・職人の世界では師匠の存在が必要

・障害を負った人の動作獲得に理学療法士が必要

最低限の練習量は必要だけど、運動学習を促してくれる存在が不可欠ということです。

 

運動学習する上での質の問題

運動学習には質の向上が必要

運動学習を促進するうえで、最低限量をこなす必要があるということは前述のとおりです。

ただ同じ量をこなしていても、学習が早く進む場合と遅い場合があるのはなぜでしょうか?

ここに運動学習の質の問題があります。

 

運動学習には色んな方法や考え方があります。

スポーツの世界でも指導者の指導によって大きく上達することもあります。

逆に本人にとって合わない指導を受けたことで感覚がおかしくなって下手くそになることもあります。

 

運動を上達させるには、その動作や運動を行ううえで必要となる感覚を身に着ける必要があります。

脳や身体がみんな違うように指導方法もマッチするかしないかがあります。

優秀な指導者は様々な指導方法の引き出しを持っています。

選手ごとに合った指導方法を選択することができるわけです。

 

運動神経が良い人はボディイメージが正確

運動学習には運動イメージやボディイメージが大切

運動神経が良いといわれる人はどういう人をイメージしますか?

例えば、初めて経験する運動で手本をみただけなのに、上手く行える人などは運動神経が良いといえるでしょう。

こういう人たちは何が優れているといえるのでしょうか?

観た運動を脳の中の運動イメージで再現することが正確に行えているといえます。

 

ある動作をするときに、肩の角度がこのぐらいで肘がこのぐらい曲がってて、手がこのあたりにあるみたいなイメージが優れていたりします。

これはボディイメージとか身体図式とかいったりします。

脳の中にある自分の身体の感覚と言い換えることができるかと思います。

 

子供の頃から現在までの経験の中で、身体の感覚の正確性が人によって異なります。

遺伝や子供の頃の運動経験など様々な要因により作られます。

子供の頃に色んな遊びをして身体を使うことにより、ボディイメージや身体感覚のトレーニングになります。

ボディイメージや身体図式が正確に作られている人は基盤ができているため、新しい運動スキルを獲得するにあたって有利となります。

 

運動を行うプログラムが存在する

運動プログラムの学習

投げるためのプログラムが存在する

もう一つ運動神経の良さを規定する考え方として知っておくべきものがあります。

一般化された運動プログラム(Generalized motor program : GMP)というものです。

 

人間の体には数多くの筋肉が存在し関節も多数存在します。

そしてそれぞれの運動のタイミングや方向なども含めれば、運動方法は無限に存在することになります。

ボールを投げるという動作をするにあたって、上腕二頭筋をこのぐらいの力をいれて、肘をこのぐらい曲げてとか、一つ一つ脳から命令を送っていては複雑すぎてコントロールできないはずです。

 

そこで、ボールを投げるためには、ボールを投げるという運動プログラムが存在するという考え方です。

こういう一般化されたプログラムをGMPといいます。

運動神経が良いといわれる人は、このGMPという運動プログラムの精度が良いということがいえます。

 

ドッジボールを投げるのが上手い子供が初めて野球のボールを投げても、上手く投げられたり飲み込みがよかったりします。

投げるという行為を小さい頃に繰り返すことで、投げるという運動プログラムの質が良くなっていると考えられます。

野球選手がゴルフが上手というのも、バッティングの洗練されたGMPがゴルフスイングにも活きるからといえます。

 

似たような運動プログラムが邪魔するケースもある

逆に構築されたGMPが新たな運動スキルの獲得の邪魔をするケースもあるといえます。

僕の体験談になります。

中学生の頃に卓球をやっていたんですが、社会人になった際にテニススクールに通い始めました。

運動のプログラム的に卓球の振りとテニスの振りが似ています。

卓球の時の癖が抜けずに、テニスで手首を使いすぎる打ち方になってしまい修正がなかなかききませんでした。

卓球の運動プログラムが、テニスに悪影響を与えて邪魔しました。

GMPというのは、運動学習を考えるうえで大切な考え方になります。

 

GMP学習とパラメータ学習

GMP学習とパラメータ学習

運動学習を行っていくうえで、何を学習するかという観点において大きく2つの学習に分けることができます。

それがGMP学習とパラメータ学習です。

・GMP学習:運動の型となるプログラムの学習

・パラメータ学習:運動の強度のコントロールの学習

 

例えば、バスケのシュート練習で考えてみましょう。

・シュートフォームの練習⇒GMP学習

・3ポイントシュートのリングにいれるための強度⇒パラメータ学習

 

スポーツにおいて、基本となるフォームが大事です。

素振りなどを練習するのはGMP学習にあたります。

この基盤となるGMPの精度が低いと、いくらパラメータ学習をしてもバラツキがなかなか改善されません。

運動学習の優先順位は

①GMPの精度をあげるGMP学習が基本

②パラメータ学習で強度のコントロールをしていく

 

まとめ【運動学習を知ることがスポーツ上達のカギ】

SKILL UPには運動学習を知ること

運動神経の良し悪しをわけるものとしては2つあるといえます。

①ボディイメージ・運動イメージの正確さ

②GMPの正確さ

この2つの精度が高い人は運動神経が良いといえるのではないかと思います。

つまり、初めて行う運動スキルにおいても、自分のボディイメージや運動イメージが正確であり、自分の体を思い通りに扱うことができるわけです。

 

GMPが正確だとその運動を行うにあたって必要となる身体の動きが適切に引き出されるといえます。

運動神経の良し悪しというのは遺伝によるところもありますが、ボディイメージやGMPはいかに子供の頃に身体を使った色んな遊びを経験してきたか、によるところも大きいといわれます。

言語の学習に効果的な年代があるといわれているのと同じように、運動の学習に効果的な年代もあります。

運動神経の良い子供にしようと思えば、小さい頃のその時期を逃さないように色んな運動体験をさせてあげることが重要ではないかといえます。

 

スポーツの上達においては、練習量も大事ですが質がものをいいます。

フォーム練習など基本となる動作の練習(GMP学習)を基盤にすること。

それが身についてから、運動の強さをコントロールする練習(パラメータ学習)を積み重ねることがポイントです。

正しい運動学習の知識をもったうえで、練習を積み重ねていきましょう。

 

それでは、また!