しーたす
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こんにちは!理学療法士のしーたす(@generalist_pt)です。

マッサージガン、使っていますか?

手軽に筋肉をほぐせる道具として一気に広まりましたが、僕が理学療法士として気になっているのは「どこに当てるか」がほとんど語られていないことです。

実は海外では、マッサージガンの使い方が原因で救急搬送された症例が医学論文として報告されています。

しかも報告されているのは、持病のある高齢者ではなく20代の女性です。

この記事では、解剖学的に「絶対に当ててはいけない部位」と、僕自身が実践している安全な使い方のルールをまとめました。

そのうえで、安全に使うための機種の選び方までお伝えします。

マッサージガンで実際に起きた事故【医学論文の症例報告】

まず、脅かすつもりはないという前提でお読みください。

マッサージガン自体は有用な道具です。ただ「使い方を間違えると何が起きるのか」を知っておくと、避けるべき場所が腑に落ちます。

首に3週間使って椎骨動脈が裂けた(27歳女性)

米国の救急医学の専門誌に報告された症例です。

27歳の女性が、めまい・頭痛・首の痛みを訴えて救急外来を受診しました。

検査の結果、首の骨の中を通る椎骨動脈という血管が裂けていました(椎骨動脈解離)。CT検査では、第2頸椎から第5頸椎にかけて血管が不規則に細くなっていたと記録されています。

きっかけとして挙げられたのが、その3週間前から首にマッサージガンを使い始めていたことでした。

幸い、この方は抗血小板薬による治療で後遺症なく退院しています。

椎骨動脈は、首の骨(頸椎)の横にある小さな穴を貫いて脳へ向かう血管です。
つまり「首の後ろから側面」は、骨のすぐそばを太い血管が走っている場所ということになります。
ここが裂けると、脳梗塞につながることがあります。

太ももに10分当てて横紋筋融解症になった(25歳女性)

こちらは理学療法の国際誌に報告された症例です。

25歳の女性が、エアロバイクを30分こいだあとにコーチからマッサージガンを両方の太ももに約10分間当ててもらいました。それを2日続けたそうです。

その後、太ももの痛みと複数の内出血、そしてコーラのような色の尿が出て入院になりました。

診断は横紋筋融解症。筋肉が壊れて、その成分が血液中に流れ出す状態です。

筋肉が壊れた度合いを示すCK(クレアチンキナーゼ)という数値は32,290 U/Lでした。基準値が24〜195 U/Lなので、桁が2つ違います。

幸いこの方も2週間の入院で数値は正常化しています。

この症例で注目してほしいのは「10分」という時間です。
両太ももで10分ということは、片脚あたり5分。
「気持ちいいから、つい長く当ててしまう」——これは誰にでも起こりうる使い方だと思いませんか。

マッサージガンを当ててはいけない部位7つ

ここからが本題です。解剖学的な理由とセットで挙げていきます。

① 首(前も後ろも)

最優先で覚えてほしいのがここです。

首の前面には頸動脈が走っています。ここには血圧を感知するセンサー(頸動脈洞)があり、強い刺激で血圧や脈拍が急に下がることがあります。動脈の内側に付いた沈着物が剥がれて脳に飛ぶリスクもあります。

そして首の後ろから側面には、先ほどの椎骨動脈です。

マッサージガンの商品説明には「首にも使える」と書かれていることが多いのですが、僕は首はやめておくことをおすすめします

肩こりをケアしたいなら、肩の上の盛り上がった部分(僧帽筋の上部)から下にとどめてください。ここなら大きな血管も神経も深い位置にあります。

② 背骨の真上

背中を触ると、真ん中に硬い出っぱりが並んでいるのが分かります。これが棘突起という骨です。

ここは皮膚のすぐ下が骨なので、振動が骨に直接伝わります。

当てるなら、背骨から指2〜3本分外側の筋肉が盛り上がっているところです。

③ 関節と、骨が出っ張っているところ

膝のお皿、肘、肩の先端、くるぶし、すねの前面などです。

筋肉のクッションがないので、振動が関節や骨膜に直接届きます。

そもそもマッサージガンは筋肉をほぐす道具なので、筋肉がない場所に当てる意味がありません。

④ お腹・鼠径部・脇の下

お腹には内臓があります。鼠径部(脚の付け根)と脇の下には、太い血管・神経・リンパ節が皮膚の浅いところに集まっています。

いずれも筋肉を狙って当てられる場所ではありません。

⑤ 神経が皮膚のすぐ下を通る場所

ここは理学療法士として特に注意してほしいところです。

膝の外側の少し下(腓骨頭)……総腓骨神経
肘の内側(いわゆるファニーボーン)……尺骨神経
脇の下……腕神経叢

これらの場所は、骨と皮膚の間に神経が挟まるように走っています。

強い振動を長く加えると、しびれや脱力が残ることがあります。とくに膝の外側の総腓骨神経が傷つくと、足首が上がらなくなる(下垂足)ことがあります。

当てていてビリッとしたら、それは筋肉ではなく神経です。すぐに離してください。

⑥ 内出血・腫れ・熱をもっているところ

ぶつけた直後、捻挫した直後、赤く腫れているところは避けてください。

炎症が起きている場所に振動を加えると、出血や腫れが広がります。

「痛いところをほぐす」のではなく、「硬くなっている筋肉をゆるめる」のがマッサージガンの役割です。

⑦ 静脈瘤のある場所

ふくらはぎの血管がボコボコと浮き出ている場合は、その部分を避けてください。

血栓が剥がれるリスクがあります。

こんな人は、使う前に主治医に相談を

部位の問題とは別に、体の状態によっては使用そのものを見合わせたほうがいい場合があります。

・血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる……内出血しやすくなります
・骨粗鬆症と言われたことがある……骨がもろくなっています
・妊娠中……とくにお腹まわりと腰は避けてください
・糖尿病で足の感覚が鈍い……痛みという警告が働きません
・ペースメーカーなどの植込み型機器がある
・深部静脈血栓症の既往がある
・その部位に人工関節やプレートが入っている

先ほどの横紋筋融解症の症例では、この方に治療していない軽度の鉄欠乏性貧血があり、コーチが既往歴を確認せずに施術していたことが問題として指摘されています。

体調に不安がある日は、無理に使わないことです。

僕が実践している安全な使い方4つのルール

ルール1:1か所は60〜90秒まで

これが一番大事です。

横紋筋融解症の症例は、片脚5分でした。ですから「長く当てるほど効く」という考え方を捨ててください。

タイマーをかけるのがおすすめです。気持ちよくなると、体感時間は当てにならなくなります。

ルール2:必ず一番弱いレベルから始める

強さは、その日の筋肉の状態で変えるものです。

いきなり最大にせず、弱いレベルで当ててみて、物足りなければ1段階ずつ上げてください。

ルール3:押しつけない。「当てるだけ」

これは本当によく見かける間違いです。

マッサージガンは振動で筋肉に働きかける道具であって、で押し込む道具ではありません。

体重をかけて押しつけると、振動が届く前に組織が潰されます。内出血の原因もほとんどがこれです。

本体の重さだけで軽く触れさせて、ゆっくり動かしてください。

ルール4:痛みが出たら、その時点でやめる

「痛気持ちいい」は目安になりません。

ビリッとする、ズキッとする、当てたあとに痛みが残る——このどれかがあれば、その使い方は体に合っていません。

そもそもマッサージガンに効果はあるの?【研究では】

ここまで注意点ばかり書いたので、効果の話もしておきます。

2023年に国際スポーツ理学療法誌で発表された系統的レビューでは、13件の研究がまとめられています。

1回使うだけでも……柔軟性(関節可動域)と、瞬発的な筋力の向上が確認されている
1〜4週間続けると……腰や肩の痛みが軽くなったという報告がある
筋力そのもの……結果はまちまちで、はっきりした結論は出ていない

まとめると、「体を動かす前の準備」と「継続したときの痛みのケア」には期待できるという位置づけです。

研究の方法にばらつきがあるため、最適な当て方や時間についてはまだ定まっていません。だからこそ、安全側に振った使い方をおすすめしています。

安全に使うための機種の選び方3つ

ここまでの話を踏まえると、選ぶ基準は自然と決まってきます。

① 振幅は8〜12mm程度で十分

振幅とは、先端が前後に動く幅のことです。

数字が大きいほど深く届きますが、そのぶん刺激も強くなります。

セルフケアが目的なら、深く突き刺すような刺激は必要ありません。8mm前後あれば、太ももやふくらはぎといった大きな筋肉にも十分届きます。

② 重さは軽いほどいい

意外に見落とされがちですが、これがかなり重要です。

自分でケアする場合、腕を上げた状態で保持し続けることになります。

本体が重いと腕が疲れて、無意識に体重をかけて押しつけるようになります。ルール3が守れなくなるわけです。

「軽い」は、そのまま「安全」に直結します。

③ 静音性

音が大きいと、夜や集合住宅で使えません。

使えない時間帯が増えると、結局は使わなくなります。

基準を満たすモデルの一例

僕が上の3条件で見たときに条件を満たしていたのが、日本のフィットネスブランドuFitのRELEASER Miniでした。

振幅8mm……セルフケアには十分で、強すぎない
500g・手のひらサイズ(14.2×4.4×9cm)……押しつけずに保持できる重さ
振動レベル4段階……ルール2の「弱から始める」が実行できる
アタッチメント4種……部位に合わせて先端を替えられる
静音設計・最長6時間駆動……集合住宅でも使える

1つだけ補足しておきます。

この製品に限らず、マッサージガンの商品説明には「首にも使える」と書かれていることがほとんどです。

ただし本記事で説明したとおり、首は避けて、肩から下で使ってください。メーカーの説明より、解剖学のほうが優先です。

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フォームローラーとどう使い分ける?

「どっちを買えばいいですか」とよく聞かれます。

マッサージガン……ピンポイント。狙った筋肉に短時間で。持ち運べる。
フォームローラー……面で広く。背中・太もも全体など広い範囲を一度に。自分の体重で圧を調整できる。

使い分けの目安としては、広い面をまとめてほぐすならフォームローラー、ふくらはぎや前腕など細かい部位を狙うならマッサージガンです。

また、フォームローラーは床に寝転がるスペースが要りますが、マッサージガンは座ったままデスクでも使えます。

フォームローラーの使い方はセルフマッサージにオススメのフォームローラーとは【使い方・効果】で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

よくある質問

毎日使っても大丈夫ですか?

1か所60〜90秒というルールを守れば、毎日でも問題ありません。

むしろ「週に1回、長時間」よりも「毎日、短時間」のほうが安全です。

運動の前と後、どちらがいいですか?

研究で柔軟性の向上が確認されているのは1回の使用直後なので、運動前のウォーミングアップとの相性がいいです。

運動後に使う場合は、筋肉が張っている状態なので、いつもより弱いレベルで短めにしてください。

強く当てたほうが効きますか?

効きません。強さと効果は比例しないうえに、内出血と横紋筋融解症のリスクだけが上がります。

当てたあとに内出血ができました

押しつけすぎか、当てすぎのどちらかです。使用を中止して、色が引くまで待ってください。

広い範囲の内出血や、尿の色がいつもと違う場合は、すぐに医療機関を受診してください。

まとめ

当ててはいけない部位……首(前後とも)/背骨の真上/関節と骨の出っぱり/お腹・鼠径部・脇の下/神経が浅い場所/内出血や炎症のある場所/静脈瘤
安全な使い方……1か所60〜90秒/最弱から/押しつけない/痛みが出たらやめる
選び方……振幅8〜12mm・軽い・静か

マッサージガンは、正しく使えばセルフケアの選択肢を確実に広げてくれる道具です。

ただ、体に振動という物理的な力を加える道具でもあります。

「どこに当てないか」を先に決めておくことが、長く安全に使うための一番の近道だと思います。

この記事について
本記事は理学療法士が一般向けに書いた情報提供であり、診断や治療に代わるものではありません。
持病がある方、治療中の方、妊娠中の方は、使用前に主治医または担当の理学療法士にご相談ください。
使用中や使用後に、しびれ・脱力・強い痛み・尿の色の変化などがあった場合は、速やかに医療機関を受診してください。

参考文献

  • Vertebral Artery Dissection After Use of Handheld Massage Gun. Western Journal of Emergency Medicine, 2022.
  • Rhabdomyolysis After the Use of Percussion Massage Gun: A Case Report. Physical Therapy, 2021;101(1).
  • The Effect of Percussive Therapy on Musculoskeletal Performance and Experiences of Pain: A Systematic Literature Review. International Journal of Sports Physical Therapy, 2023;18(2).

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